炙り餅
芋掘藤五郎(いもほり とうごろう)ゆかりの観音像を本尊とする卯辰観音は、
3代加賀藩主前田利常に輿入れした珠姫が安産を祈願した事で一躍有名になり、
8月9日の四万六千日はもとより、毎月の十八日詣も、大勢の庶民で賑わった。
参詣者がこぞって求めた観音町名物は、門前に店を構える若松屋の飴と蓑屋の
お焼き団子である。お焼き団子は白味噌生姜たれの四つ刺し団子で、行き交う
人の袖にたれが付いて困ったという逸話が残るほど人気が高く、文化・文政
(1804~1830)のころは、二人の美人姉妹も評判を呼んだという。
このお焼き団子に着想を得て、千日町の団子商・茶屋梅田与三右衛門が
文政年間(1818~1830)に創案したのが、野田神明宮(泉野神社)の祭礼名物
として知られる炙り餅である。こちらは御幣の形をした五つ刺しで、たれは
お焼き団子と同じ白味噌生姜。現在は神明宮が直接扱っているが、当時は境内に
軒を並べた露天商が商っており、私の子供のころも露天商で買っていた記憶がある。
『炙り餅を食べると物負けしない』とされ、境内で食べてしまう慣わしだった。
食べ物は勘所さえつかめば、オリジナルでなくとも名物になり得る好例といえよう。
北國新聞 出版局 月刊「アクタス」より
【加賀ゆかりの菓子について】
この菓子は、加賀の菓子文化の歴史を再現するため特別に作られました。
そのため販売は一切しておりませんのでご了承くださいませ。記・加賀百萬石 【加賀ゆかりの菓子】
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上製本/化粧ケース入り
定価10,000円(消費税込み)