梅枝もち
加賀一ノ宮として知られる白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)の
例大祭(五月六日)には、さまざまな神饌が供えられる。神饌の餅は六種あり、
その一つが『梅枝もち』である。潔斎した神職が、米粉を水でこね、蒸上げて
棒状の団子にしたものに、梅の枝を模してヘラで六つのきざを付け、胡麻油で
揚げる。現在は十本ずつ麻でゆわえ、三束計三十本をもって一盛となす。
『白山比咩神社略史』によると、『梅枝もち』の由来は菅原道真公にさかのぼり、
加賀守に就いたことのある道真公が、寛永八年(八九六)四月七日に献じたと
古伝が残っている。まだ原始的な菓子しかなかった時代に、道真公が加賀の
地に初めて都ふうの図案化された餅をもたらしたわけである。この意匠の神饌餅は
ほかになく、白山比咩神社のみに伝わっている事も特筆されよう。
道真公は元慶(がんぎょう)七年(八八三)、渤海客使が加賀国に到着したのを
迎えるために加賀権守となった。都で冶部大輔(じぶのたいふ)として客使の
接伴員役を務めた際、禁裏内の菓子製造工場である主菓餅(くだもののつかさ)
(菓餅所と称した)に作らせたのが、あるいは『梅枝もち』だったのかもしれない。
周知の通り、加賀藩主前田家は道真公を祖と仰ぎ、加賀の地に天神信仰を
普及させ、家紋にも梅を使った。『梅枝もち』を加賀百万石にゆかりの深い餅とする
ゆえんである。
北國新聞 出版局 月刊「アクタス」より
【加賀ゆかりの菓子について】
この菓子は、加賀の菓子文化の歴史を再現するため特別に作られました。
そのため販売は一切しておりませんのでご了承くださいませ。記・加賀百萬石 【加賀ゆかりの菓子】
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