蓬莱
関白の豊臣秀吉公が天正十五年(1587)十月一日に京都の北野神社境内と
松原において開催した『北野大茶湯』は、その盛大さにおいて歴史上最も有名な
茶会である。秀吉公自身が茶を点てた相手だけでも八百三人にのぼったという。
加賀藩主祖前田利家公は、くじ引きにより豊臣秀長、豊臣秀次(ひでつぐ)、
蒲生氏郷(がもう うじさと)、千利休(せんのりきゅう)らと二番席にて茶を喫した。
その茶会に際し、神社への献餞(けんせん)に用いられた菓子が、松竹と鶴亀を
図案化した落雁『蓬莱』である。その木型は後に消失したが、『北野大茶湯』
三百五十周年を記念して昭和十一年(1936)に開催された『昭和北野大茶湯』を
機に復元された。
さて茶会後、『蓬莱』を下賜された利家公はそれを写し、松竹梅だけを描いた
加賀藩版『蓬莱』を創案した。金沢城内でどのように使われたのかを示す史料は
残念ながら見当たらないが、卯辰山の豊国神社の祭礼に使われていた形跡がある。
明治期に至り、金沢の菓子屋が新年の初売りに使いようになったが、大正初期で
姿を消した。
北國新聞 出版局 月刊「アクタス」より
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