御前花菓子
幕末のころ、加賀藩主前田家が催す法要は年間300回にも及んだという。
藩祖利家公以来14代、およそ250年間における係累の広がりを示すものとはいえ、
藩主にとってはさぞかし重荷であっただろうと拝察される。
こうした法要の折、生花の代わりとして参拝者が仏前に供えたのが御前花菓子である。
打ち菓子、いわゆる落雁である。むろん生花も供えられたが、特に盛夏の時期などは
重宝されたと思われる。法要のみならず、元服や快気祝いなどの慶事にも用いられた。
御前花菓子は5代藩主綱紀公の元禄時代に生まれ、藩主のみならず高禄の家臣宅でも
贈答していた。金沢の士族出の家では大正時代まで、その風習の名残があったと聞いている。
月ごとにモチーフの花が異なり、12種をもって一揃いとする。菓子屋によって月別 の
花種や意匠が違っており、諸江屋に残る木型は、1月の住の江(松)、2月花椿、3月の
舞披き(桐)、4月桜川、5月堀江の花(菖蒲)、6月大和撫子、7月香須花(芙蓉)、
8月花桔梗、9月重陽の宴(菊)、10月龍田の淵(紅葉)、11月の新袖の香(橘)、
12月南天形 となっている。写真は慶事用の住の江(左)と南天形である。
杉折に奉書紙を四つ手に敷き、花菓子を入れ、すき間は真綿で埋める。
これを進物盆 に乗せ、袱紗で包んで届けるのが正式の作法である。
北國新聞 出版局 月刊「アクタス」より
【加賀ゆかりの菓子について】
この菓子は、加賀の菓子文化の歴史を再現するため特別に作られました。
そのため販売は一切しておりませんのでご了承くださいませ。記・加賀百萬石 【加賀ゆかりの菓子】
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