亀の子煎餅
加賀藩祖前田利家公が金沢城に入城したのは天正11年(1583)6月14日である。
「加越能文庫」の「御入城の件」によれば、その際に「亀の子せんべい」が献上された
とある。献上者の名は記録にはないが、土地の有力者であったであろう。
製造者も不明だが、越中井波の瑞泉寺御用達の菓子屋.板倉家だったかもしれない。
浄土真宗の北陸布教の拠点だった瑞泉寺は、金沢にも強い影響力をもっていたからだ。
格式は申し分なく、板倉家は後に前田家御用達となっている。
古来、亀はめでたい動物とされ、有職故実にもしばしば登場する。「亀の子せんべい」は
亀の甲羅に似たせんべいの表に、これまためでたい紅の蜜を引いたもので、菓子製造
技術が未熟だった当事としては最高水準の菓子であり、「寿せんべい」の原型ともなった。
臼で挽いたもち米を蒸し、ついてもちにし、型に入れて焼き上げる。これを蒸気で湿らせ
亀甲にそらせ、乾かしてから蜜を引いた。
器は漆塗りの六足亀甲型の合折。紀宗直伝の有職厨具図(大友楼所蔵)を基に製作
したもので、本来は白木である。
北國新聞 出版局 月刊「アクタス」より
【加賀ゆかりの菓子について】
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そのため販売は一切しておりませんのでご了承くださいませ。記・加賀百萬石 【加賀ゆかりの菓子】
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